着物のお直しは、縫い込みがどのくらいあるかでスッキリ解決します

依頼される寸法直しでご相談が多い「裄直し」「袖丈直し」「身丈直し」に絞って、わかりやすくご説明します。

おばあちゃんの着物、お母さんの着物、いただいた着物、アンティーク着物など、着てみたら小さくて寸法が合わないので、自分の寸法で着ることができないかなーと思っていたら、着物はお直しができるのよと聞いたことがあるのですが、こちらので直していただけますか?と言うご相談が非常に多くなりました。

着物は昔から直して着ることが出来るように、ほどいたら元の反物に戻せるように裁断してありますので、お直し可能です。(洋服の立体裁断とは違います)

「裄直し」

※裄(ゆき)背中心から肩までを肩巾と言い、肩から袖口までを袖巾と言い、背中心から袖口までを合わせて裄と言います。

昭和時代の裄の寸法は、1尺6寸5分(62.5㎝)が標準寸法でしたが、その時代の女性の平均身長が152㎝ぐらいから割り出されたもので、反物の巾も広くする必要がないで、9寸3分(35.3㎝)位で間に合っていました。

ところが、現代女性の平均身長158.6cm位なので、裄の寸法は1尺7寸5分(66.3㎝)が標準となり、以前より1寸(3.8㎝)長くなっています。

おばあちゃんの着物、お母さんの着物が、短いので出してほしいという方の相談が圧倒的に多いので、裄出し(長く)について詳しく説明します。

裄直しは、どんな着物でも出来るというわけではありません。

お直しに出す前に裄が出せる分の縫込みがあるのか確認をしてもらう必要があります

※縫い込み=縫い代の中に入れ込んで縫うこと

単衣の着物なら裏返せばどのくらい縫い込みがあるか見て分かりますが、袷の場合は袖付けと身頃の部分を指で触って、どのくらい縫い込みがあるのか確認します。

袖側と身頃側の縫い込みを測ってみて、たとえば、身頃側1,5㎝位で、袖側2㎝位あるとします、身頃側と袖側で縫い込みが最低でも1づつ必要なので出せる長さは1,5㎝になります。

昭和のころのは、裄の標準寸法が1尺6寸5分でしたので、反物の巾は9寸3分(35.3)前後で、着物に仕立てるのに縫しろが最低で3分〜5分(1㎝〜15)×4=1寸2分〜2寸(4㎝〜6)が必要ですので、裄を出せるのは1尺7寸(64.6)が標準的に出せる範囲です。

このように、昔の反物は現代の人の体格が大きくなることを想定していなかったので、縫い込みがあってもお好みの寸法に裄を出せないこともあります。

また、おばあちゃんやお母さんの古い着物(アンティークも含む)の裄を出す場合、出したい部分(縫い込み)だけ元の濃い色なので、色の違いが目立ってしまうので、目立たなくするには、職人に依頼して目立たなくすることも出来ますが、着物の状態によっては出来ないこともあります。

簡単な裄出しは、肩山で出す方法がですが、元の縫込みの筋がきれいに消せず、残る場合もありますが、料金的にはお安くできます。ただ袖が垂れ下がったようになるので、長襦袢も同じようにしないとつり合いが取れないので、着用した時にしっくりしないので、呉服屋としてはお勧めできません。

呉服屋としては、きれいにお直して着ていただきたいので、袖をはずして元の縫い代の筋を、専門の職人に筋消しをしてから、和裁士に縫ってもらうことが一番きれいに出来上がる方法と考えております。

「袖丈直し」

袖丈寸法は、長くなった裄寸法とは違い、今も昔も1尺3寸(49㎝)が標準です。

袖の縫い込みは1寸5分(6㎝)位は入っているので、短い袖丈でも標準の袖丈に直せることが多いです。

ただ、最近ではあまり見ることがない昔のウールの着物や普段着使いの紬などは、日常着と着ていたので長い袖が邪魔になるし、誰かに譲ることなど考えずに着古していたので、袖丈は1尺1寸~1尺2寸(42㎝~45,5㎝)で仕立てることが多く、縫い込みも(5分・2㎝)たくさんせずに仕立てられていました。

逆に明治、大正、昭和初期のフォーマルな着物は袖丈が長く仕立られていたなごりで、昭和40年代はお嫁入り前の娘さんの紋付無地着物や付下げの袖丈は、1尺5寸~1尺7寸に仕立てられ、嫁いでから1尺3寸に直して着ていました。

あと、振袖ですが現在の振袖は、袖の長さが大振袖(3尺・113,5㎝)が標準のようになったいますが、お母さんが着ていた昭和の時代は、中振袖(2尺5寸)が支流だったので、ママ振りの袖丈を長くする場合は、3尺まで長くする縫い込みがないので、出来たとしても2尺8寸位が限界だと思います。

振袖の袖丈を長くするときは、長襦袢の袖丈も一緒に直すことをお勧めいたします。

もし、振袖だけ長くしても長襦袢も長くしないと、着物の振りから襦袢の袖が飛び出してしまい、着てる本人も気になると思うので、同時にお直しすることをお勧めします。

「身丈直し」

※身丈(みたけ)=身丈には2通りの測り方があります。

         ①肩から測る(肩から裾まで測る)

         ②背中心から測る(背中心から裾まで測る)

身長差が5㎝以上高い方が着る場合、身丈を直す必要が出てきますが、3㎝位の短さならば、着付けで腰紐の位置を下めに締めれば、そのままで着ることが出来ます。

身丈が短いとおはしょりが出来ず、着物本来の着姿にならないので、自分に合った身丈寸法で着用することをお勧めします。

お直しする前に、身丈の長さが現在の着物よりどのぐらい必要か、

まず最初に内揚げにどのぐらい生地が入っているか確認することで、どのように直すか判断します。

小紋や紬、色無地のきものなど、仕立てるときに裾で柄合わせが必要がないきものは、必要以上の揚げを入れないので、出せる長さに限りがあります。

それに対して、柄(模様)合わせが決まっている礼装用の着物(留袖・訪問着・付下げ)は、裾を切り詰めることがないので、縫込みが比較的に多く入っています。

そして礼装用の着物の場合、余った生地を、身頃の内揚げとして入れ、衽(おくみ)部分の余りは衿付けの中に、衿部分のの余りは衿先に折り返して入れてあるので、ほどいて縫い込みを出せば、きちんとした寸法に仕立て上がるようになっています。

礼装用の着物は、このように切り詰めないで縫い込んであるので、母から子、子から孫へと受け継がれていくことが出来ます。

また、揚げに余裕がない場合は胴接ぎ(どうはぎ)をして長くすることができます。

 

※胴接ぎ=おはしょりや帯で隠れる部分に生地を足して長さを出す方法です。

お母さんが二十代で着ていた着物を、シックに染めて私寸法に仕立て直しました。

おは処理と帯でかくれる部分を計算し、その部分の着物を裁断して、別の生地を足し布、はぎ加工して身丈を出します。

例えば、身長が150㎝で、着物の身丈を測ると4尺(151.5㎝)で、縫込みもないお母さんの着物を、身長160㎝の娘さんに譲るには、身丈が4尺2寸2分(160㎝)必要なので、足りない分の布2寸2分(8,5㎝)を足せば娘さんに譲ることが出来ます。

足し布するにも限度があり、通常1箇所で剥ぐ剥ぐことが多いいですが、当店では経験豊富な和裁士がいますので、1ヶ所ではなく2ヶ所ではぐこともできますが、着る方の体型に合わせて採寸してから、剥ぐ位置を決めます。

多いと、帯からはみ出てしまので、どのくらい足し布をできるかは、お着物を見ながらアドバイスさせていただきます。

着物に充分な縫込みが入っていいれば、それを下ろせば着れるようになります。

まとめ

「裄直し」「袖丈直し」「身丈直し」のご説明してきましたが、お分かりになりましたでしょうか?

着物の優れているところは、体形の違う次の人に譲ることが出来ることです。

部分的な直しにしても、仕立て上がっている着物をほどいて反物に戻して、カビやスジを洗い張りすることで、ほどく前の着物より大きく仕立てることが出来ます。

着物は洋服の立体裁断ではないので、いろんな方法(お客様の要望も)でお直しが可能です。

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