母親の振袖のお下がり〜母から娘に着てほしい〜

成人式で、母親のお下がりの振袖を着る

たまに母親から自分の振袖を娘に着てもらいたいという相談があります。

お母さんは、数年前から娘の成人式に、両親に作ってもらった振袖を娘に着てもらい、親子二代で同じ振袖を着た写真を撮って、残したい思いがあるのですが、自分のお下がりの振袖を娘に着せることは可能でしょうか。

結論、可能です。

私の振袖着てほしい!

そこで、どのようにすれば、母のお下がりの振袖を娘に着てもらえるかを着物屋やとして、ポイントをまとめてみましたので、ご紹介させていただきます。

お母さんからの問い合わせの多くは、ご自分が成人式で着た振袖を箪笥から出してみて、娘さんに羽織ってもらうと、ほとんどの娘さんは、送られている振袖のカタログと比べると色柄が古臭いし地味から着たくない、と言われるお母さん方が多いようです。

寸法が大きく違う!(事例1)

娘さんの身長がお母さんより10㎝位高いので、お母さんの振袖を測って見ると内揚げだけでは足りないので、ほどいて洗い張りして、帯でかくれる所に別な布を足して、仕立て替えることになりますが、元の上前と下前の丈の長さがふぞろいな状態で仕立てしてあったので、生地を足す時に同じ長さの身丈になるように調整したので、上前と下前の足し布の長さが違います。袖丈、裄も生地いっぱいに出して仕立て替えまします。

*洗い張り(あらいはり)=着物をほどいて反物に戻して、きもの全体の汚れやカビ、臭い、すじをすみずみまで落とすために、石鹸を使って刷毛(はけ)で水手洗いする方法です。

汚れやシミ、やけ!

振袖や長襦袢に汚れやシミ(黄変)、やけが多くある場合は、京洗いやシミ抜きでは、綺麗にすることができないので、解いて反物にして一色描けるとヤケやシミが目立たなくなりました。

*一色描ける(ひといろかける)=反物に新しい色を染める

小物を変えてコーディネート!

着付けして、現状のままのコディネートで似合うかどうかを見てもらい、どこか気になるところがあれば言ってください、と言いましたらお母さんも娘さんも自分たちではよくわからないというので、私が見る限りお母さんが着用した時の小物のでは、娘さんの雰囲気に合わないので、帯締め、帯揚げ、重ね襟は同系色でまとめるとスラッと見えるので、この三点だけ変えたコーディネートを提案いたしました。

マイサイズに仕立て!

振袖を解いて洗い張りして、シミや汚れを取れば、見違えるようにきれいになり、長襦袢は、シミやヤケがあるので振袖に合わせて少し濃いめのピンク色に染めて、ヤケやシミが目立たなくなり、着物も長襦袢も綺麗になって、マイサイズに仕立て直しました。

娘に対して、説得の仕方!

成人式にご自分が着た振袖を娘に着せたいという思いがあり、娘に振袖を羽織らせて見せたところ、ふるくさい感じがするし、好みの色じゃない、模様もヤダなどと言われるそうです。、

着付けができるお母さんは少ないと思いますが、ただ振袖を羽織らせただけでは、振袖を着ている雰囲気が出ないので、娘さんは送られてきているカタログやインターネットで眼にする情報を元に判断していると思います。

簡単に羽織っただけでは、似合っているのか似合っていないのか、判断がつかないので、ふるくさくて好みの色じゃないから着たくないと言っていると思うので、振袖一式持って娘さんと一緒にご来店いただいて、振袖、長襦袢、袋帯、小物類を着付けして、着姿を見てもらえば納得してもらえると思います。

振袖と長襦袢を着て、伊達衿を入れて、帯を付けて帯締め、帯揚げをして着てもらうと、ほとんどの娘さんが着てもいいかなーと言われます。

どうしてかと言うと、きちんと着付けして着れば、全体の雰囲気が娘さんにもわかるので、「似合うかも」とお母さんの振袖を見直してくれます。

費用

数十年前のお母さんの時代は、振袖一式で数十万円そろいますとか、レンタルで済まそうという方はあまりいませんでした。

その時代は、娘さんの成人式の振袖にかかる費用(60万~100万)を、用意していたご両親が多くいらっしゃいました。

今どきの振袖は生地が薄く染もプリント染で、色柄も深みもなく帯や帯締めをはじめとするの小物が一式セットで、数十万が相場ですので安いものが多いです。

お母さんの振袖は国産の生地に手間暇かけて染めているので、深みのある色、柄が多く高価な振袖が多いです。

事例 ①

事例 ⓶

 小物を変えてたコーディネート

部分的に寸法が違う!

部分的に寸法がかなり違う (身丈・身幅・袖丈・裄等) 時は違うところだけお直しできますが、見た目にはカビやシミがわからなくても、湿気による臭いはしますので、お直ししてから京洗いをして、気持ち良く着ていただくようにお勧めします。

袖を短くして訪問着として着たい!

振袖の袖を切って訪問着として着たいという方がいますが、振袖の全体の柄(模様)のバランスを考えてカットしてもいい柄と、よくない柄があります。

袖をカットしても不自然じゃない柄の振袖を選んでおく必要があります。

振袖の柄付けは、着物本体から袖にかけて、合うように描いていることが多く、訪問着にするには、袖丈を50㎝~60㎝にするので、ちょうどよいところでカットできればいいのですが、中途半端の所で切ると袖の下の部分の柄が切れてしまうので、着物の下の部分の柄とのバランスが崩れるので、さも振袖の袖をカットして訪問着にしたのがよくわかります。
 
事例② こちらの絞りの振袖の柄は、絵羽柄(えばもよう)の振袖なので、袖を短くすると全体のバランスが良く見えないので、訪問着にすることはお勧めしません。

まとめ

最近の振袖のカタログなど見ても、総柄で色や柄がハッキリして豪華で華やかな振袖がたくさん掲載されていますが、どれも似たり寄ったりで、成人式会場でかぶってしまったりするので、とっても居心地が悪いものです。

数十年前のお母さんの時代は、国産の重めの生地に手染めで染めるので、深みのある色、柄(模様)が多く、お下がりでもお母さんの振袖を着て成人式に行けば、逆に引き立ちます。

お母さんの振袖を素敵に着られるように嘉洛では、経験とさまざまな技術やサービスをご提案しています。

母から娘に、娘から孫娘に受け継いでいけるように、年に一度の虫干しをしていただいて、保管することをお勧めいたしています。

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